Dear 志江ちゃん
Acrylic, watercolors, colored pencil, chalk ground
33.3 x 53.0cm
 お元気ですか?私は死んだけど元気です。
 志江ちゃんは「死んでも楽になれる保証なんて無いよ!」と言って最後まで引き止めてくれましたね。引き止めてくれた人なんて志江ちゃんだけで、私本当に嬉しかったです。ありがとう。でもね、やっぱり考えて、どんなことになろうと今より悪くなることなんて絶対にないと思ったの。だから死にました。

 せっかくだから、こっちに来てからのことを書くね。
 初めての死は意外とあっさりしていて、気が付いたときは知らない川のほとりにいたんだ。不思議とお腹は空かないし、とっても気持ちがいいし、初めの何日かは散歩とか昼寝とかして過ごしたよ。(もしかしたら、あそこは天国だったのかもしれない。)そしたらある日、寝ているところを起こされたの。鬼に!鬼といっても随分イメージと違って、小柄なかわいらしい女の子だった。鬼の子らに、今からあなたは地獄へ行きますと言われて、正直戸惑いました。生きてたときより悪くなることは無いと思って死んだけど、まさか…って。まあ、親より早く死んで天国なんて行けるはずなかったんだけどね。
 鬼はそれぞれ楽器を持ってて、地獄へ案内してくれる道すがら、なんだか聴いたことの無い不思議な音楽を演奏してくれたよ。つい楽しくなっちゃって、私ダンスなんてしたことも無いのに歩きながら踊っちゃった(笑)
 一週間くらい歩いたかな?地獄に着くと、すぐ私の歓迎会があってさ、見た目はちょっと個性的な人ばっかりなんだけど、親切だし面白いし、私生まれて(死んで)初めてお腹から笑えたんだ。みんな本当に良くしてくれる。だから今、とっても幸せです。

 志江ちゃん、あなたは最後まで私を見捨てなかった人だから、私あなたには幸せになってもらいたい。この手紙が届くかどうかは分からないけど、いつか届くように願って川に流します。
 それじゃ、またね!